たどる道/夢日記
*夢日記*081110.mon
列車を降りて田舎道を歩いている。
陽光は柔らかいというよりも弱い。秋ではなく冬の始まりか――終わりのような陽気。
僕は歩いていく。
向こうから高校生くらいの男女の集団が歩いてくる。その中に見覚えがある少女がいた。
「こんにちは」少女に挨拶をされたが、僕は見覚えを感じるだけで具体的に誰なのかが思い出せない。
「姉がお世話になっています」少女はそう言った。僕は友人の女性に少女が似ているのだとようやく気がつく。
「いやー、そんなに言われるほどではないよ、ただの友達だし」僕は答える。
「いえ、そんなことは。それでは学校がありますから」そう言った少女が足を止めたのは一瞬のことで、彼女の友人たちを追ってすぐにすれ違っていった。歩みを緩めて振り返りながら話していた二人はまた前を向く。
僕はその後もずっと歩いていた。登校中の学生とすれ違っていく。
僕にもあんな時期があったと思いだす。
しばらく歩いていると人通りがいったんなくなり、そしてまたじわじわと多くなってきた。
今度も登校中の学生たちが歩いているのだが、今度は歩いている方向が僕と同じだ。
僕は歩くのが早いのでどんどんそんな彼らを後ろから追い越していく。
ただ、僕だけ服装が制服ではなく、いつもの白いシャツにシンプルなズボンといういでたちなので目立っている。後ろから「誰だろ?見慣れない人」という言葉が聞こえてくる。
だが僕はそれを無視して何気ない風を装って歩き続けていた。僕はどこかに向かっているのだ。
その中に、見覚えがある後姿を見つけた。僕は追い越し際に顔を横向けて彼女の顔を見た。
それは先ほどの少女の姉そのものだった。ただし、服装が高校時代のままだ。
すっ、と僕は息を吸った。どう話し始めようかと考えようとした。
「あ、久しぶり」彼女が先に口を開いた。話しながら歩きを止めないのは、僕が歩みを止めないからだ。
「うん、元気?」僕は答えながら彼女の姿を見直す。セーラー服に違和感を覚えている。
「そう、制服だよ。26歳だけど」彼女はそう笑いながら言った。
「そうか……」僕はそんな返答にもならない言葉をつぶやいた。僕の心に鈍く重いものがのしかかった。
しばらく二人は並んで歩いたが、彼女が話すばかりで僕は黙っていた。僕は僕の考え事に取り付かれていた。
「そうだ、サプリメント食べる?」彼女がそう言ってボトルを取り出した。ブロッコリー味のサプリメント。昔食べて苦い思いをした錠剤だった。
「それって――」と僕は絶句して苦笑した。彼女はすでに三粒を取り出して手を差し出していた。
僕はそれを片手で受け取り、口の中に放り込んだ。今度は苦くなかった。それはただ、はっきりとした味がなかっただけだったのだが。
気がつくと彼女はいなくなっていた。
ばりぼりと錠剤を咀嚼しながら小学生の列と幼稚園児の列を足早に追い抜いていく。
そしてまた一人になり、道は山に消えた。
細い細い獣道を上っていく。その獣道もやがて地滑りの裂け目に消えた。僕は崩れた山肌の固そうなところを確かめながらさらに登っていく。赤土のよく粘るが乾くともろい土だ。僕は慎重に足場を固めていく。
しばらく行くと盛り上がった土の向こうに空が見えた。その向こうは下っているはずで、何かしらそこから道筋が見えるだろうと思った。
しかし、登ってみるとそこから先は崖になっていた。とても下れそうにない。視界を振って左右を見渡すと右の斜面はより緩やかに水棲植物に覆われた水面へと下っているようだ。
その川の向こうの丘のさらにまた向こう、僕の住んでいた街が木々の切れ間に見えている。
水棲植物に覆われた川は容易には渡れそうにないが左側の斜面に比べるとまだ組しやすいと見えた。
僕は露出した木の根を頼りにさらに上に登り、そこから崖っぷちをたどって下ろうと動き出した。
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……夢の神様っていると思うんだよね。オネイロスね。
絶対脚本書いている存在がいると思うんだよ。
ってか、俺自身が書いているのではないという意味で、そういう存在が必要だ。
俺の無意識が俺に対して説教たれているという自己完結的な感じがすごくイヤ。
分かってるからこそ、こういう夢を見るのだ、とも取れるけど。
中学時代に対しては物理的には逆行して時間的には順行し、そこから高校時代に至っては物理的には順行して時間的に逆行している。それはひとつのターニングポイントとしての中学時代が大きく認識され、そして続くターニングポイントとして高校時代が認識されている。
「やりなおせるとしたら、中学時代から」ってやつです。
でも、高校時代の友人たちはそこから現実に引き戻すんですよ。
もう、制服は似合わないって。
そんで、ずっと遡って行って逆行を突き抜けて、山は荒れ、川が濁っている現実に帰還するわけです。
そういう説教臭い非常に癪に障る夢。