塩野七生『ローマ人の物語(29~31) 終わりの始まり』新潮文庫/読書感想
塩野ローマ史の文庫版29~31です。
いろいろと本職の学者諸氏から問題点が指摘されているらしいのですが、どこかで読まないといけないかなぁ。
確かにこの「ローマ人の物語」は小説であるだけに塩野氏の私見が盛り込まれているけれど、察知できないわけではない。(っていうか、こういうことを書くと言うのはなんとなく物語的意味での小説の文脈から外れているという証拠なのかもしれないけど。論説的小説というのかなぁ。よくわからないジャンル)
そこを自分でも意見を考えつつ読むのはよいことではないかな、と思います。
……と書きつつ、数字が若い巻での自分の読み方はそうじゃなかったような気もしますけど。
なんか、1巻を読み始めてからえらい時間が経っているから、受け取る僕の側で変化が起きているのかもしれない。
それかもしや、塩野さんが好きなのであろうカエサルやアウグストゥスの頃は著者自身の気分が乗っていたからこそ、文章が生き生きとして面白く感じられていたのかもしれない。
ローマが滅亡にさしかかるこの巻では、いまいちキレが鈍い気がするのですよね。
ローマ全土を巡って防衛線を再整備したハドリアヌスから一転して、アントニヌス・ピウスは首都ローマ近縁でその治世を過ごします。
ハドリアヌスのアントニヌス・ピウスの中継ぎとしての指名には、外政は自分が完璧を期したという自負を見た気がします。ハドリアヌス指示のルキウスの血族との婚姻も次期皇帝が内政を収めるために、元老院との雪解けを期待してのものと見ることができるのではないかと。
アントニヌスは皇帝になったらその婚約を破棄してしまうわけですが、実際それ以外の部分でしっかりと元老院と良好な関係を築いていくわけですし。
マルクス・アウレリウスは、首都育ちから皇帝になり、皇帝になってから外敵の進入に対応するために前線暮らしをすることになります。
哲人皇帝とはいえ、しっかりやるべきことはやる人物に育つ辺り、ローマの人材育成システムは本当に優秀だと思います。
後継としてのコモドゥスの指名に関しては、長所はないが欠点もないという点で無難な選択だったのでは?軍団長との関係も悪くない所を見ると、叩き上げの軍団長が不満を抱くレベルではなかったと解釈できるし。
また、養子による優秀な人材への継承という概念も、先帝たちに子が無かったと言う面が強い気がする。というか、塩野氏はあまり重視していないけれど、出生届の義務化から見ても少子化の傾向があったのかもしれない。家族の強調とかもそうだし、家庭から崩壊して行ってのかも、と思った。
コモドゥスは、やはり姉の裏切りがまずかったのだろう。この姉の変化を読みきれなかったのが一番の失敗だと思う。
その後は、なんていうか地位を金で買う話の後に内乱が起こるわけですが……。
全体に僕の感想もキレが悪い。
読み終わって5日が過ぎてからこれを書いているからなぁ……。
塩野氏も映画『グラディエイター』の話をえらい長々と書いたり、なんとなく興が乗っていない気がした。
つーか、ローマ史って面白いからもっとしっかりとしたやつを読みたくなってきたなぁ。
(081104記)