ありの食べ物/daily

芝生の上であぐらを組み、太陽を浴びる。

手は伸ばして膝の上に。手首が膝小僧に載るように。

目を瞑る。

芝の葉のひんやりとした感触を足で感じる。

額から顔、腕、腹は太陽のあたたかさを感じる。

風がときおり服の中を吹きすぎて行き、あたたかさを減じる。

体の歪みによって体軸からそれた筋力が体に違和感を訴えさせる。

僕は無駄のない姿勢を求めて身をくねらせる。

ありが足へと這い登ってくる。

一匹、二匹、三匹。

膝の上の手にも登ってくる。

彼らはときおり皮膚を噛む。

足の痛覚は手よりも鈍い。

足を噛むことは許せるが手を噛むことは我慢しづらい。

ときおり、息を吹きかけて手からありを落とす。

蚊が腕に留まっていたので一匹殺した。

陽光によって体が温まり、頭がかゆくなってくる。

頭を掻くと頭皮を傷つけるだろう。

僕は掻く替わりに軽くぱたぱたと叩く。

ふけと髪の毛が舞い落ちる。

まんべんなく頭を叩くとかゆみが収まった。

髪の毛は5本ほど抜けた。

ズボンの上にふけが落ちている。

ありの一匹がそのうちのひとつを銜えて足を下りていく。

彼らに皮脂とポテトチップスの区別はつかないのだろうと思った。

そして僕はふたたび目を瞑る。

足は地に埋まっていく。

体は空に溶け出していく。

髪が風になって揺れる。

存在が土になり風になるまえのこの体とは何なのだろうか?

ありが組織の一つ一つを噛み砕いて彼らの巣穴に運び込むまでの間の姿としてこの肉体があると考える。

それが何のためにあるのかを考える。

そうやって体と心を暖機していく。

十分に温まったところで部屋に戻る。

鼻をかもうと思った。

彼らに二つのティシューの区別はつくだろうか?

食べられればなんでもいいのだ。