上橋菜穂子『天と地の守り人』偕成社/読書感想

三部立てになっており、非常に長いです。

それから、かなり政治的、軍事的にシビアな話が物語の大部分を占めます。

面白かったです。

が、ちょっと難しいかな、と。

どこがというでもないですが……チャグムが微力である点が少年には息苦しく、バルサの感覚が少女には分かり辛いのではないかと。特に、チャグムの功業はある程度年がいっていると大変なことだと評価できるのですが、もっともっと大きな夢を見る少年にはまだまだ不足に感じるのではないかと思います。

つまり、「リアル」なんですよね。

ファンタジーというよりもリアルなんです。

チャグムの矮小さも、バルサの衰えも。

それがファンタジーとして難しいからこそ最大の魅力なのですが。

テーマとしては、『神の守り人』との対比で見てみるとよいと思います。

「神の力が無い」という前提において、人と人の集団が持つ力、そしてそれを超える自然の力との付き合い方、それは「神の力がある」という前提において人と神との力の違いを書いた『神の守り人』よりももっと強く人の力を感じさせると思います。

あとは……もっと余韻を持たせた長いエンディングでもよかったんじゃないかなぁ。

というよりは、バルサのその後の話の後にチャグムのその後の話がある―そういう世代交代を印象付ける終わり方をする作品は多い―方がよかったかもしれない。

でも、「ああ、読んだなぁ」と深く満足できるシリーズ完結にふさわしい作品でした。

エンディングで出番が無かった師匠は不平を鳴らしてそうだとか、バルサとタンダの間に子供は何人産まれたのかとか、また別にファンとして空想する余地があるのだと思おう。