打撃の考え方/Hawks

コーチ陣と第一次戦力外が発表されるまで書くのを自重しようと思っていたけれど、王語録に注目すべき部分があったので我慢できずに反応。

気になった箇所は秋山新監督についての質問に応答した部分。

―2年間、総合コーチとチーフコーチを務めた秋山新監督の良さは

 王前監督 選手に技術的なこと、バッティングのことを教えていて、自分なりの信念を持っているのが分かった。選手たちはチーフコーチがいて打撃コーチといて、とまどうことがあったかもしれない。そういう意味で自分と理論の合う人をね(打撃コーチに招けばいいの意味)。監督だし、打撃コーチをするわけにいかん。今年の西武も楽天も何にしろ、みんなバッティング練習を工夫してきている。

日刊スポーツ「王語録」20081008配信より抜粋)

王監督、秋山チーフコーチ、新井打撃コーチの三者がそれぞれに異なる打撃理論で選手に接し、それで選手たちが戸惑っていたことをうかがわせる発言。僕の懸念通りだorz

ここで「打撃コーチをするわけにいかん」と話しながら、王監督は積極的に指導していたからなぁ。

僕の見立てでは、王監督の指導下にあったのは、松中、小久保、多村、田上、本間、荒金、中西、長谷川、高谷、城所、吉川、あとはベテランだから自主性に任されていそうだけど的山、かな。特徴は前捌きでの強引な引っ張りの打撃。

新井コーチの指導下にあったのは、川崎、それから一応、本多か。本多に「一応」と付く理由は新井コーチの指導がなかなか身につかず、調子が上がらないことにしびれを切らした王監督が「強く振る」ように指導することしばしばだったから。そして本多自身そっちの方が性に合っているらしい(それでは困るのだが)。特徴は引き付けてレベルスイングで強く跳ね返す広角の打撃。飛距離はまちまちだが、率が出る。かつて村松はこの打法で覚醒した。あと、山崎、森本、金子あたりの王監督が手が回らない選手たちも新井コーチが指導してるっぽい。結果が出たのは森本だけだけど、これはセンスの問題だからなぁ。センスある選手は王監督が丸抱えだし。

大村はベテランだけに自分で調整していたと思われるが、タイプ的には新井コーチの指導方針に近い。また、辻は大村の教えで成長したと公言している。ほぼ新井コーチ系と見ていいだろう。

微妙なのは、仲澤、小斉。仲澤は2軍から上がった直後は反対方向への打撃が良いのだが、しばらくするとひっぱりになって率を落として2軍落ち。小斉は左打席から左中間への打撃が良い。昔の松中みたいな打撃。長打力は王監督にとって魅力的なはずなんだけどなかなか起用されないので、よくわからん。どうも、無理せずコースに逆らわない打撃を心がけているように見えるのだが、それって王監督指導下の選手にはあまり見られないことだから、もしかしたらあんまり言うこと聞いてないのかも。(2軍からあがった直後は良かったという意味だけなら荒金、中西もこのタイプ。どちらも反対方向への打撃だったが引っ張りに矯正されました。)

つまり、王監督指導下が12人、新井コーチ指導下が7人ってとこですか。

改めて整理すると新井コーチってぜんぜん立場ないね(´・ω・`)

仕事させてもらえずに打撃不振の責任を負って契約更新せずって可哀相です。

山新監督の理論は、去年一昨年の吉本への指導の経緯を思い返すと王監督と新井コーチの中間くらいの感じがする。新コーチとうわさされる立花氏の教え子と思われる西武の若手も割と思い切りよく振りつつ、コースに逆らわない感じです。

ちなみに、ファームの日本一決定戦の試合経過を見ましたけど、どうやら石渡さんは右打ち徹底でエンドランを多用していた様子。これで2軍から上がった直後の選手が右打ちがうまいのには納得した。

見ていく場面と仕掛ける場面とがしっかり区別できていて、1軍よりもいい攻め方をしていた。

まあ、アベレージヒッターとホームランバッターのどちらが育てにくいかというと、ホームランバッターの方が育てにくいので、王打撃コーチと新井打撃コーチのどちらが優れているかは難しい問題です。

なぜなら、打率は四球を選んだりして打たずに維持する術があるけれど、本塁打は打たないと―それも強く打たないと生み出すことが出来ないからです。イチローではないですけど、率を維持することよりも本数を重ねることの方が難しいのです。

では、王打撃コーチと新井打撃コーチの二頭体制の何が悪かったか。

それは、王監督

1番から9番まで全ての打者に本塁打を求めたからでしょう。

皆が本塁打を狙えば、自然とソロホームランの割合は高まります。しかし、ツーラン、スリーランは出塁する意識がなければ生まれず、得点力は低下するのです。

出塁する人、それを還す人の役割分担の考えがホークスには無かった。だから得点効率が低かったのだと思います。

僕は、「回の先頭打者が1番打者の役割をすること」がベストだと思っています。

回の先頭打者は、1番打者であろうが4番打者であろうが、ヒットだろうが四球だろうが内野ゴロから内野安打あるいはエラーという形だろうが、とにかく出塁を目標とする。

出塁できたら?打順を見る。次が4~6番打者なら4~6番らしい長打を期待しましょう。そうすると二、三塁の「単打で2点のチャンス」ができるでしょう。次が7~9番ならバント、次の打者で「単打でも1点のチャンス」になる。僅差なら前者でもバントが有効でしょう。序盤なら後者でバントと見せかけてエンドランもありうる。先頭打者が出塁に徹することで攻撃の幅が広がるのです。

逆に塁に出る意識が低く、先頭打者をなかなか出せなければ攻撃の幅は広がりません。二死からの攻撃では、打って打つあるいは四球をもぎ取るしかないのです。しかし、二死から連打するのは難しい。3割打てば好打者と呼ばれる世界で、二死つまり二打席が終わってから次の二打席で二連打が生まれる確率はどれだけ低いか。

先頭打者が出れば、その一打席のあとにさらに三打席のチャンスが生まれ、3割という打率を信ずるならその中で一本はヒットが生まれるはずなのです。

そういう考えが、必要だと思います。