2008-09-28 シンク/散文 ヒビ記 逆さまに沈む海 浮力に吊されて 私は苦しい 手を伸ばすけれど地面は遠く 足は天を差して水面についたり離れたり 足元は明るく 頭の先ほど暗く 僕は地面を求めてもがく 体は芯が通ったみたいに動かなくて 手足だけをじたばたと泳がす そこではたと気がつく 頭を使えば? 今どんな状況? 逆さまなんだって気づく 気がついてしまえば なんだかばからしくなって 体の自由が戻って水面から顔を出してみた 星のない静かな夜で 陸地はどこにも見えなかった 何かが足に食いついた 土に還るしかないと思った