ケータイ小説を読んでみた/読書感想

まずはこちらのニュースから。

「あしたの虹」を書いた理由 対談 瀬戸内寂聴さん・藤原新也さん(毎日新聞)から一部抜粋

 瀬戸内 ケータイ小説については日本語をだめにする、文学ではないなど、悪口ばかりを聞きました。でも非常に売れている。知らなきゃ何も言えないと思い、読みました。これなら売れるなと小説家として思いました。さらに「これなら書ける」と思ったのが書き始めたきっかけです。何でも私は自分の手で触らないと信じないんです。

あの瀬戸内寂聴さん(86歳)がケータイ小説デビューしていたという驚きのニュースがネットで話題になりました。

話題の種となった作品「あしたの虹」(ペンネーム:ぱーぷる)はこちらから⇒http://no-ichigo.jp/profile/show/member_id/73865

そして、同時に寂聴さんが源氏物語千年紀賞名誉実行委員長を務めた第3回日本ケータイ小説大賞もほぼ同じタイミングでの発表となり、これまた大賞受賞作の一風変わった作風がネットで話題となりました。

大賞受賞作「あたし彼女」(kiki著)はこちら⇒http://nkst.jp/vote2/novel.php?auther=20080001

両方読んだよ!

順序としては、「あたし彼女」→「あしたの虹」で読みました。

感想。

あたし彼女」おもしろかったよ!

話はベタな恋愛小説なのだけれど、「ケータイで読む」という特性に「友達(=読者)にメールを送る」ような文体が合致していて、メールで友達に恋愛相談をされているような気持ちにさせてすごく読ませる作品に仕上がっている。

プロットはありがちなのだけれど、女性らしく小物が利いているのが特徴で、テンポもよいからさくさく読める。

全429ページあるんですけど、30分くらいで読み終わった。

噂に聞く「恋空」よりは内容はすごく平和だし、これが大賞というのは「若い子も伝わる形ならばこういう物語好きなんじゃん」ってほっとしました。「恋空」のあらすじを聞いた時は「最近の若い子は荒んでるのかなぁ」って思ったけど、そうだよね、普通だよね。良い作品があると知れただけでも安心。

要求があるとすれば、男性視点に移ったところで「もぉ」ではなく「もう」を使うと少し文章が締まって、男性視点を強く印象付けることができたと思う。

書籍化とかいろいろあるだろうけど、これはケータイか少なくともPCで読んだほうが良いと思う。

まあ、確かに文章はゆるゆるですよ。噛めば噛むほど味があるわけではない。

でも、物語が合い去れる条件っていうのは、昔から技巧だけじゃないでしょう。

エンターテイメントとしてこの姿は正しい。

それから、日本語を駄目にするという批評も奇妙だ。

確かに「あたし彼女」は文章の密度が薄いけど、優秀賞の一つ「告白‐synchronize love‐」(夏木エル著)くらいの密度の文章は最近の一般向け小説にも見られるし、これで全760ページあったら薄めの文庫くらいはあると思います。(横書きで読むの辛いので読んでいないけど)

僕は、日本語の乱れを正すものがあるとすれば、それは会話の中での修正以外にないと思う。

その言い方はおかしいとか、この場面にはこういう言い回しがあるとか、そういうのは実際の会話の中でしかできない。つまり、もっと若い人と年長者は会話しないといけない。会話しないから日本語が乱れているのだと思う。

さて、後回しにしたぱーぷるさん(寂聴さん)のケータイ小説ですが……源氏物語を下敷きにしているけど良く考えたら俺、源氏物語を通しで読んだことなかった……orz

でも、ぱーぷるさんの「ケータイ小説書くんだ!若い文章だ!」ってのがすごい伝わってきました。マジパネェっす。

でも、そこかしこに古風な表現があって、そのたび噴き出してしまいました。とてつもなく可笑しくて困る。

で、やっぱり「あたし彼女」には負けてるな、と。

読むのが大変だった(苦笑)

時間は倍ぐらい掛かったし。少しでも硬い文体になると紙媒体で縦書きで読みたくなる。

他の受賞作もさわりを読んでみたけれど、やはり読者に語りかけるような文体のものばかりだった。

それは、日常でケータイでメールを打つ時に、相手に話を聞いてもらえるように短く簡潔に分かりやすく書くという形式に準じているのだと思う。

紙媒体でそういうシンパシーを求める文体をやると、「なにを大仰な」と思ってしまう。

10代前後の同質化を追い求める年齢に、ケータイで友達感覚の文体というのはピッタリなのだと思います。

その同質化を経て、異質な物へ理解を示す段階があるのだと思いますが……。

とにかく、文章を読んでくれるだけ、いいじゃないですか。

そう思いました。

物語ってそもそも、口承の時代から場で感情を共有したり、楽しんだりするものですから。

それは、技巧があったほうがいい。

でも、技巧が主役じゃないんですよ。

なんかこういう様式、他にもあると思ったら……「電車男」に代表され、以後、まとめブログが継承しているスレッド型のストーリーテリングに似ている。

あれも語りかける形式で、簡明さが求められる。