高野和明『13階段』講談社文庫/読書感想

第47回江戸川乱歩賞作品。

タイトルだけでも不吉な感じがして良いのだが、中身も硬派で良い出来。

死刑制度を中心に日本の司法制度について衒学趣味を感じさせることなく十分に語って問題提起し、かつ、サスペンスとして本筋のプロットにも趣向を凝らしている。

確かに、この出来ならば江戸川乱歩賞といえど選考に困る事は無かっただろう。

良作です。

作品の出来については以上。

しかし、作品に提起されているテーマについて感想を書くとするならば、こんなものでは済みません。

僕は……確かに、死刑にすべきと思えるような人間は存在します。

しかし、感情的にそう思うことと、論理的に考える事は違います。

畜生と人間の違いを定義することが難しい。

畜生を屠殺して食べる事と下種を殺して打ち捨てる事と「食べないものは殺さない」という精神とゴキブリは見つけ次第抹殺という判断、それらの区別が僕の中で上手い事切り分けられないのです。

直感的には、死刑を法に組み込む事は論理性を欠くと思います(論理的でないですが)。

人類もずっと考え続けているのだと思いますけれど、刑というのは難しいです。