ロバート・A・ハインライン『夏への扉』ハヤカワSF文庫/読書感想
著名なSF。
猫好きで本が好きな人に、SFの入り口としてお勧めするのにベストな一冊。
とりわけ最初の2ページが猫好きには素晴らしくたまらない名文。
21世紀に読む我々としては、この作品の初出が1957年であることに注意が必要。
あらすじはこう――
1970年、技術者ダン・デイヴィスは失意の中にいた。
彼は優れた技術者で、家事用ロボットを発明し、それを販売する会社を経営していたのだが、営業を任せていた共同経営者と恋人と思っていた女性に手ひどい裏切りをくらったのだった。
そんな厭世的気分に沈む彼の目に冷凍睡眠の広告が目に入る。
彼は憎い連中がいる現在から未来へと逃亡し、そして年老いた彼らの前に姿を現すことで小さな復讐をしようと思いつき、それを実行しようとする。
しかし、冷凍催眠に向けて健康診断を受け、アルコールを断ってみるとすっかり気持ちが変わって裏切り者と再対決する気持ちになってきた。
そしてかつての共同経営者の家へと車を走らせるのだが――
翻訳は良い。
ただ、猫のピートの肩書きが「護民官」というのには首をかしげた。
Wikipediaによれば原文では"Arbiter"だそうだ。これだと「噛み分ける者」くらいの意味で「調停者」がよかったんじゃないだろうか?
かなり技術者的な視点からタイムトリップを取り扱っていて、それによって大きな踏み間違いがない。
SFを予言や予知かなにかと勘違いする人たちには、ぜんぜん未来像が正しくないなんて言う人がいるかもしれないが、そういう細部は本筋と関係ないだろう。
(以下愚痴っぽくネタばれ)
しっかし、こういう若紫的な話って男は好きだよねぇ。
うらやましくないけd……いや、正直うらやましい。
一見ロリコンっぽいけど、この場合美人確定を知ってての、だから微妙か。
真性のロリコンとかペドフィリアとは別の所で、男は自分好みの女性を育てたいという欲求があるよね。それは、年上でも同い年でも自分好みにして征服するという意味で、そう。
相手が未成熟であればあるほど成功しそうな気がするという幻想だと思う。
女性的にはこの展開はどうなんだろう?
俺の無粋な考えでは、5年後くらいに若くて口の上手い男がフレデリカの前に現れて、リッキィにさよならとか思ってしまう。
とにかく、ずるいと思ってしまうんだよなぁ。
作品としての面白さとは別としてね。