宮部みゆき『今夜は眠れない』角川文庫/読書感想
宮部さんが描く男の子はむしろ女の子っぽい。
つまり、本書なら「雅男」じゃなくて「雅子」だったなら、主人公の心の動きに納得できるのではないかと思いました。
性に目覚めたばかりの中学生男子にとって20歳以上の女をキレイと思うのはかなりマセているし、小学生をを異性的意味で可愛いと思うのは掛け値なしにロリコンです。そういうのは友人にくさされます。
谷間ならともかく宝石に目を惹かれるなんてこともないし、球拾いが運動部をサボったら復帰は絶望的と考えるし(この辺の感覚は『果てしなき渇き』の尚人少年の方がリアル)、なにより息子は親父を裏切れないし母親も捨てられないからグレるものだからこんな冷静には動けないと思う。
中学生の男子というのは、もっと潔癖症で、だからこそ世の中の実態を知るにつれてスレる―というか挑戦的というか突っ込んでいくというか、そうなってしまうのだと思います。逆に女の子は、諦めて受け入れて呑み込んでいくのだけど、その辺の感覚の違いは大きい。
だから、雅男くんには感情移入しにくいんだよなぁ。
一般的には。
もちろん、こういうタイプの男の子もいるでしょう。でも、「女々しい」ということでいじめられやすいですよね。
そういうフェミニンな男性とみるか、いっそ女の子と読み替えてしまうか。僕は後者で読んでしまった。こういう考えが頭に浮かんでしまっただけにそう読まざるを得なかったです。
そしてそれが面白かった。「雅子」だったらすごくすんなり読めると思うんですよね。
島崎との関係もそっちの方が甘酸っぱげで楽しいんだよなぁ。最初の水族館とか特に。
男は三人組とかで動くことが多くて、あまり二人ってのはなぁ。『ズッコケ三人組』しかり。子供の二人組では維持の張り合いになって物事がうまく運ぶことが少ない。大人になるとバランスを考えたり、目的を間違わなくなるので二人組が効果的になるんですけどね。二人はなぁ・・・。固定すると中高生ではホモ疑惑とか出るしな。そうなるくらいなら一人で動く。女子とは違う群れ感覚がある。
『ブレイブ・ストーリー』も、いまいち釈然としないというか、設定よりも2つくらい年下なら・・・と思うのです。男は年齢が上がるほど女性とかけ離れていくからどうしようもないのだけど。あれもライバルの男の子との関係が微妙なんだよなぁ・・・。
それにしても、宮部さんは小学6年生とか中学生の普通の女の子を書いたりしていないのだろうか?
不思議だ。