掻痒/daily

2時に布団の上に横たわった。

しかし、右頬骨の違和感、右肩の緊張、右腰が浮いていること、それらが気になって眠れない。

四肢がそれぞれに胴体から脱け出して、それぞれにずるずると這って行ってしまう。

そんな夢を見ていたような気がする。

手足の違和感に寝返りを打つたび、窓の外の街灯の明かりがまぶたを貫いて眠りを浅くした。

その眠りと覚醒の合間に、雨の気配を感じ取った。

雷雨が来る。

雷雨が来る。

半覚醒状態で見ている夢の中に、そんな予感だけがこだまする。

そこにかちりと音を立てて回していた扇風機のタイマーが働いてファンが停止した。

空気の流れが弱くなる。

動きがない部屋の中、じりじりと気圧と湿度が変化しているようだ。

雨はまだか。

雷はまだか。

夢の中はすでに嵐なのに、現実が追いついていなくて知覚の差に悶える。

いらいらしていた。

すると、さあっと風が吹いて、ぱたぱたと雨滴が落ちてきた。

雨だ!

俺は喜びを胸に起き上がった。

窓を閉めなくては。

雨が降りこんでくる。

雨だ。雨だ。

俺は喜んでいた。

しかし、雨は確かに雷を伴っているものの勢いは弱い。

もっと、もっと弾丸のように降って欲しいのに。

雨は強くなる気配を見せない。

俺は落胆して布団の脇に置いた携帯電話を見た。

4時だった。

寂しい見当はずれにがっかりしたまま布団に体を横たえる。

窓を閉めた室内の空気は動きがなく、淀んでいるように感じられた。

室内の湿度がますます高まる。

頭がかゆくなってきた。

いつものように前髪の生え際のあたりではなく、全部がかゆい。

寝不足なのに眠れない焦燥感から、我慢弱くも頭をかきまわす。

またいらいらが募って起き上がり、外気を誘い込もうと窓を開けた。

雨は止んでいないが勢いは弱い。

窓を開けても問題はないだろう。

しかし、そんな雨勢を不甲斐ないと思い、侮蔑した。

扇風機をまた動かし始めた。

風が肌に当たるのを感じつつ、もう一度布団に横たわる。

皮膚を人工の風がなでる。

筋肉は弛緩しているのに妙に熱を持っていた。

呼吸も重く、頬が火照っている。

なんという倦怠。

寝そべったまま肩を回したり、足を折り曲げたりしてみる。

力の入り方が日常と異なっていて、後背筋や足の裏が攣りそうだ。

攣りそうなので力を抜こうと思うが、はじめから倦怠感に包まれた全身に抜く力などない。

ぎりぎりとかみ合わせの治らない顎をかみ締めながら転々と体勢を変え続ける。

そこに遠雷。

音だけだった。

光もない。

まったく、馬鹿にしている。

どぐどぐと心臓がいらついている。

胃はぐるぐるとうごめいている。

なんと寝苦しいんだ。

顎が落ち着かない。

頭がかゆい。

手も足もおかしい。

全身から違和感が脳に伝達されて、神経節が発火している。

呼吸を。

仰向けになって深呼吸を繰り返した。

しかし、うまく肺を膨らませることができず、横隔膜は上下しないままに胸だけがぎこちなく動く。

気管支で流れが滞っている。

呼吸器までもがいうことをきかないのか。

布団のはじをつかみ、半分に寝そべって半分を抱きかかえる姿勢になった。

体の左右のバランスが崩れているので、こういう横の姿勢のほうが安定感を得やすい。

眠るのを待っているのか、時間が経つのを待っているのかわからないまま、背中を丸めていた。

そうこうしているうちに空が白み始めた。

雨はいつの間にか止み、空気が乾燥してきたようだ。

気圧も高くなってくる。

気圧が低いと抑圧されたように感じ、気圧が高まると開放感が増すのは、物理的にはおかしいことだと思った。

生理は常々生存に向いていて、そのために心理を操作しているのだ。

そんなことを考えているといつの間にか眠りについていた。

8時を知らせるヴァイブレータによる振動音が耳に届いたが体は動かなかった。

夢は見ていなかった。

深い眠りと浅い眠りの汀にあって、俺は朝など通り過ぎてしまったし、どうでもいいと思った。

……ということを以前にも書いたような気がした。

デジャヴかもしれない。

そんなことはないのかもしれないし、あるのかもしれない。

それも、どうでもいい。

脳髄はまだ目覚めていないようだ。

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