綿矢りさ『インストール』河出文庫/読書感想

読むのが7年遅いか。

当時年頃の娘さんだった17歳の綿矢さんももう24くらいか。現代っ子的に年頃の娘さんだな。

時が経つのは早い。

確かにこの作品、文章がこなれていて素晴らしい。ホント遜色ない。

着想も良い。描写も良い。

読んで損はない。

しかし、物語が終わってみると、実はほとんど何も変わっていない。

そして、若者の実感としては「10代の日常ってこんなものよね」って思える。

うん、得もないような感じなんだよね。

お手本的な、教科書的な小説の小品という印象。

さて、そんなぬるいカンジ、大人が読んでどう思ったのよコレ?

「文章上手いね、すごいね」って感じだったのだろうか?

こんな、おそろしく何の解決にもなっていない、夢の無い話を高校生が綺麗に書いて持ってきて、大人が読んで、で、どうしたんだろう?

誇大妄想狂の僕としてはもうひとひねり欲しかった。

僕は欲しかったけど、それは彼女にとってリアルじゃないんだろうな。

その当時の彼女にとってのリアルっぽさは、リアルに中高生で斜めになりかけてる子たちには、読むとプラスになると思う。

文庫には書き下ろしが付いていて、つまり、2000年の彼女と2005年の彼女が同居しているんだけど、その「リアル性」ってのは変わって無くて、そしておおきなひねりはやっぱりないんだな。

そして、大学生の「まあ、こんなもんよね」ってのがよく現れてる。そういう意味で高校生は読んどけ。

それにしても、現代ってそういうしょーもないことの積み重ねの中で多くの人たちが生きていて、そして、本当にいかんともしようがない経験をしている人たちの姿はなかなか見えてこない。

だから、思春期の中で小さな事件をひたすら拡大しようとしているんだと思う。

というわけで、次は『蹴りたい背中』を探してくるとしようか。

人が変化する過程を見るのはとても楽しい。

続きを読みたいと言う意味では、背伸びしているように感じられる金原ひとみさんよりは好感が持てましたのですよ。