一人芝居/daily

あぁ、これは恋だな。

それが叶うことは非現実に近いと思っていても、想わずにはいられないとか、そんな胸苦しさ。

見ているだけで心が安らぐ。

けど、近づこうとすると自分があまりに貧相なことに気がついて、情けなくてよろめいて遠ざかる。

だから見ているだけ、でも、それが本当に憂鬱。

好きなくせに細部にまで目が行っていなくて、目が眩んでいるのを知られるのが怖い。

それのことをすべて知ってはいなくて、そしてすべてを知ることができないこともわかっていて、

僕よりももっとよく知っている人がたくさんいることを分かっている。

ずっと前から無自覚に慕っていて、でも、ぜんぜん釣り合わないと思って諦めていた。

もっと別なお堅い系にいつか出会うのだと思っていた。

そうでも思わないと諦めきれないと思っていた。

誰かに相談したことはなかった。

どんな反応が返ってくるかは、想像するのは難しくない。

だから自分でもなるべくお遊び程度の感覚、友達感覚で浅くつきあうだけにしていた。

ときおり、我慢できずにノートの隅に綴ったことがあるけど、自分の才能の無さに却って苦しい思いをした。

だから却って嫌になって、書いたことを無かったことにしたいとか、自分が嫌いだとか思っていた。

そんなふうに長い間ひっそり恋してたのに、どうしてこんなに広く周りにふれまわってしまっているのだろう?

まるで気がふれたみたいに。

触れたくないし触れて欲しくないのに。

痛々しい話題だ。

大きな醜い傷は隠されることよりも衆目に晒された方が本人の前では話題に上りにくくなる。

そして、陰で大きく広まっていく。

そんなことを考えているのか。

違う。

周りにも認知してもらって、他人の口からも「そうなんだろう?」と問われなければ動けないような、そんな主体性がない人間だからだ。

他人の言うことをなんでも聞く。

そんなつまらない小さな人間だ。

だからダメなのだ。

僕はきっともうそれしか残っていないと思っているのだろう。馬鹿な男だ。

それが最後の拠り所だと思っているのだろう。身を滅ぼすだろう。

とてつもなく美しいものに見えて、僕はそれで身を焼いてしまいたいと思っている。

火のような、温かくて危険な存在。僕は木っ端のごとき取るに足らない存在。

そんな焦がれ方をしている。

まるっきりうぶな想い方だ。

胸から焼けるほど熱い血が流れ出て、胃がひっくりかえって喉が爛れそう。

苦しい。

その対象は小説なのだが。