恩田陸『六番目のサヨコ』新潮文庫/読書感想
恩田陸氏のデビュー作。
三年に一度、生徒の誰かがサヨコとなって、文化祭で劇を行う。
サヨコである秘密を守り通し、文化祭が成功すればその学年の受験は良い結果になるという。
そんな伝説がある進学校を舞台にしたお話。
恩田陸氏は学生を描くのが抜群に上手い。
浮き沈みが激しくて、猜疑心が強いかと思えば子供染みた考えに囚われる。
子供を離れて大人に向かう途中、気負って帆を強く張っているけれど、でも行き先は見えずに漂流しているのと変わらないような、そんなふわふわした身分―高校生―それを描くのがとても上手い。
多くの本、古い本をよく読んでいたことが想像できる、少し固めの文体に、若々しさが却って映えて面白い。
ただ、物語がきれいにオチたかというと、もう少し物足りなかったかもしれない。
崖から飛び降りたメアリ・ポピンズは傘を広げてゆったりと降りるものの、着地した先は崖の途中の張り出しだった。そんな半端さ。
六番目が破局的に終わらなかった以上、もしや七番目のサヨコはもっと面白く、素敵な結末を向かえる事もありうるのでは?とも思えることがいいことなのか、悪い事なのか。
そんな印象。