荻原浩『明日の記憶』光文社文庫/読書感想

50歳にして若年性アルツハイマーと診断された男性の苦悩を描いた作品。

短期記憶から損なわれていく過程が巧妙なプロットで描かれており、素晴らしい。

ひとつひとつの設定、登場人物の配置に無駄が無く、スムースにストーリーが流れていくさまは感動的です。

日記で漢字が減っていくようすなど細かい。

そういうひとつひとつの設定が出てくるたびに「ああ、これはこうなっちゃうな……」と開始数ページ目から泣けてきます。

登場人物に悪い人が少ないので物語があまり重苦しくならず、美しくまとまっている作品です。

しかし、現実はこんなにきれいじゃないんだろうと思うとまた違う物悲しさがあります。

やっぱり資料収集は大事だなぁ。