床下/自己言及

ダメ。

全然ダメ。

思考の基盤が腐ってる。

知ってる。

誰にも言ったことがないけど、それしかない。

奥底に、床下に井戸が埋まってる。

イヤだ。

知ってる。

それがすべての行動の根拠。

悪の根本。

イヤだ。

書きたくない。

邪悪な思考だ。

14年前に埋めたソレ。

「両親が死ぬまではなんとか生きていよう」

腐敗した汚泥にまみれたその頃の自分。

「こんなに死にたいのに両親がいるから死ねない」

自分がされたらイヤなことを他人にもしていた自分。

されていたことは大したことは無かった。

していたことが最悪だった。

潔癖症だった自分。

自ら床下に沈めた。

雨、雨、雨。

少し落ち込んだ気分が却って心地良い。

楽しんじゃダメだから、僕は。

楽しくあっちゃいけないんだ。

雨垂れの音が楽しい。

歌っているようだ。

歌う、歌う、歌う。

私は歌う。

昔約束をした。

恩に報いるためにこの論文だけは仕上げようと。

彼はなんとか約束に応えた。

それが一番最近の約束。

他の約束は意見が合わなくてなかなか成立しない。

一番古いのはお互いに嘘をつかないということ。

これは約束を守らなくてはいけない状態になっていないので、ほとんど死文化している。

人間の精神とは意外に丈夫なものだ。

本当に好きなこと。

書くこと。

歌うこと。

考えること。

もうすっかりわけがわからなくなってしまって足を止めているうちに時代にずいぶんと遅れをとってしまった。

でも、どちらに歩いて行ったらいいのか分からない。

僕に強い意志は無い。

そんなものがあったらこんなところにいない。

ここは楽に到達できる場所。

意思無く流されて着た場所。

あるいは、ここまで運んで来たヤツが死んだのかもしれない。

こっちの方が可能性は高い。

もう、それは死んでしまったよ。

勘違い野郎だったから。

仕方ないよね。

見誤ったものは死ぬ。

そして後から来た者に道を譲る。

何を信じているのか?

何を信じていたのか?

そいつは自分が社会で通用すると思っていた。

でも、それは無理だった社交性が無かった。

いや、普通にはあった。

だが内側と外側のイメージにギャップがあった。

いや、無かった。

分からない。

誰にも評価は出来ない。

僕も覚えていない。

僕は過去の自分の延長線上に確かに存在しているだろうか?

虚勢を張った結果として間違った場所にいないだろうか?

24で死ぬか、生きているなら公務員になると思っていた。

詰まらない仕事だ。

人に命令されるだけの。

自分の実力を信じる自分は、もっと大きな自分を想像していたような気がする。

もっと最前線で働くような。

その残り香がここまで僕を漂流させた。

それは妄想だった。

それとは別の妄想があった。

子供の頃とは言わない。

13の頃に『果てしない物語』を読んでからの妄想。

でも、それはずっと虐げられてきて、授業中や勉強中の倦怠の隙間に割り込んで絵やアイディアを描き止める程度のもの。

真面目に検討したことはずっと無かった。

でも、世間的には真っ当な方向の妄想が力を失うにつれ、こちらの夢みたいな妄想が力を増していった。

もともと、現実的な面は日和見的で、人生をどうでもいいと思っていた。

だって、それが現実だから。

いつか破局が訪れるから、それまでとりあえず幸せでいたいと思っていた。

人間と話をするのは楽しかった。

それだけで幸せだった。

それ以上は怖かった。

知らない。

知らないよ。

僕は知らない。

そういう嘘。

幸せになる方法。

良く分からない。

どういう風に幸せになったらいい?

我慢するべき?

どれを?

何が?

どうやって?

腕や足を無くして我慢することと何が違うの?

何処の誰が我慢をするの?

いい加減にしようよ。

私も知らないけれど。

敢えて言えば、俺は我慢しない。

家を出て行きたい。

死にたくないよ?

死にたくないか。じゃあ、頑張れ。

何を?

何だろうな?

何もかもを。他人を殺すくらい。

イヤだ。

怖いよ。

怖いな。

怖かったよな。

別にいいじゃないか。復讐の対象が間違っていたって。

気持ちがよければそれで。

いい迷惑です。

……こんな思考、無駄だよ。

やめよう。