これはいくらなんでも…/侏儒雑観

……う~ん……流石に不味い記事ではないだろうか……?

東大の論文、1本1845万円 国立大でコスト最大級(2008年01月31日09時55分)

 その結果、東大は論文数は4553本で1位だったが、1本当たりの生産費は1845万円。東大より上の8校は東京外国語大や一橋大といった文系などの大学で論文数が少ないために生産費が高く出ているだけで、実質的には東大が最も高かった。論文数700以上の大学に限ると、以下、大阪大、東北大、京都大と続いた。1000万円未満の大学が55校ある一方で、旧帝大はいずれも1000万円を上回った。

いつもいい加減なこと書いている僕でも肝が冷えるんですけど……これはお粗末では?

「東大より上の8校は東京外国語大や一橋大といった文系などの大学で論文数が少ないために生産費が高く出ているだけで、実質的には東大が最も高かった。」……何を言っているのか解らない……。「東大よりも論文数が少なくて生産性も低い大学が8校あった」という書き方ではダメなのか?

ていうか、「国内外約3万1000の科学や医学の専門誌に掲載された一定の水準以上の論文の数」っていうのも、文系の取り扱いがどうなっているか解ったものじゃない。

そもそも、特に理系は最先端の研究をやろうと思えば最新鋭の実験機が必要になったりしてコスト高になりがちだし、そもそも工学に比して理学はお金にもなりにくいからスポンサー取りにくくて国に頼る部分は大きい。

論文の価値ってこんなに簡単に図れるものじゃないと思います。

全国紙でこれって……程度が低いったら無い。

言っちゃなんだけど「アサヒる」ってこういうことなのかなと思った。

(追記10:46)

……と思ったら早速はてブに批判記事がブクマされてた。

西尾泰和のはてなダイアリー「これはひどい」

原典を見れるのか。

…僕も「文部科学省科学技術政策研究所」でググってみた。

「文部科学省科学技術政策研究所」

まずは最近のトピックスから朝日新聞が記事の元にした報告書に関するものを引用します。

 国立大学法人等の財務諸表及び業務報告書をもとに、その財務構造を分析するとともに、教育、研究、社会貢献の指標により基盤的資金と外部資金等の有効な組合せの検討を試みた報告書「国立大学法人の財務分析」(調査資料150)をまとめました。クラスター分析の結果、国立大学法人が同一の機能や特性を持つものではなく、多様化していることが示されました。

……全然報告書の方向性違うじゃないか。

……つーか、研究の評価が困難であることは32ページにしっかり書いてある。

……全ての撒布図において横軸に取られている「基盤的資金に対する外部資金の割合」という言葉無しにこの報告書を語ったらダメな気がする。上記記事において批判されている旧帝大は外部資金の割合が高いからこそ高コストな研究ができている。一方で、外部資金の割合が低い地方大学も社会貢献や教育にしっかりとした軸を持ちながら、低コストな研究によってちゃんと論文の本数を稼いでいる。……ように見えるけどなぁ。

人文系大学と教育大学は国からの補助が重要となっていてイメージ通りであること。

むしろ社会的な認識と異なり他の学科と同じ経費で医師の育成が行われていること。

というのは好対照に見えた。

医療崩壊関連のブログで「医者の育成には経費が掛かると言われているがそんなことはない」とあったのを目にしたが、その証拠の一つでは?これ、重要じゃないだろうか?

総じて、研究費配分の割合に関わらず、各大学は研究活動、教育活動、直接的社会貢献の三つのどれに軸を置くかという形で住み分けを行い、多様性が生まれていることは評価できるのじゃないかなぁ?

……さらっと見ただけですが、あんな記事を書ける内容の報告書じゃないと思います。

今日学んだこと:新聞でも怪しいなと思ったらすぐググれ。意外と情報源は公開してある。