陰口/ニンゲン

僕は昔から陰口が嫌いだった。

かといって面と向かって悪口を言えるほど度胸も無かった。

ただ、みんなが陰口を言っているときにはあまり参加せずにいることが多かった。

時に陰口を言ったが、ちょっと気がとがめたものだった。

まあ、陰口を叩くほど嫌いな人間の前で平然と仲良さげに振舞うほど器用でもなかったと思うので、表情に出てしまっていたとは思う。

期待値が低かった分、嫌いな人間が少なかったというのもあるかもしれない。

ただ最近、陰口を言っている人というのは言っているほどその人間が嫌いなのではなく、単なるガス抜きとしてそういう不平を漏らしているに過ぎないということが分かってきた。

僕は「そんなに嫌いなら嫌いって言えばいいのに」とか思っていたけど、嫌いと言うほどに嫌ってはいないが本人にも修正しようの無い欠点をあげつらうことでストレスを発散させることが人にはあるのだということを理解した。

これで、僕も陰口に対する抵抗が減った気がする。

とはいえ、陰口はなるべく叩くものではない。

いつかは他人の批評を正確かつ効果的に正面切って言うことができるような人間に成りたいものだ。

とかなんとか書いたけど、結局しょっちゅう毒舌放っているような気がする。

悪気は無いんだよ。

ストレス解消じゃなくて、単に率直に毒吐いているだけだから。

…うん、なおのことタチ悪い。