dead or alive/wondeRers

「ねぇ、本当に殺しては駄目?」

「駄目だよ」

「どうして?国だって殺すじゃない」

「死刑と私刑は違うよ」

「ずるいわ。ワタシにだって殺させてよ……。そうね、死刑囚を切り刻ませてくれればいいわ」

「駄目だよ。俺らが受ける精神的負荷を考えて欲しいね」

「あら、そお?ワタシは大丈夫だと思うけど?」

「大部分は駄目だと思うよ。僕はもちろん嫌だし…」

「わたしもいやだわ」

「私も冷静では居られないよ」

「わたしもそーゆーのはちょっと…」

「俺は大歓迎だがな」

「舌なめずりするなよ。不愉快だ」

「ちぇー。楽しいと思うんだけどなぁ~」

「それだけ気楽に血を求められるなんて、怖いもの知らずで羨ましいな」

「そーね。あんたは抑えるので胃が痛そうだけど、それがまた楽しいのよね」

「全く、MなのやらSなのやら」

「そんなの、置かれた環境次第でしょ?人は与えられた役割をこなすだけ」

「意外と達観してるんだな」

「岡目八目って言うでしょ?外側からは良く見えるもんよ」

「実社会を生きる側の身になってみろってんだ」

「無理ね。ワタシは死者みたいなもんだから」

「死者……ね」

「そう、あんたに無理やりっこ棺桶に詰め込まれてる死者」

「確かに。だが、お前の自由にすれば監獄に詰め込まれるのは俺だからな」

「ふふふ。棺桶も良いモンよ?暗くてじめじめしてて……」

「確かに、そういう環境に馴染みが深いことを否定はしないが、俺の本質は火なんでね。遠慮しておこう」

「あらそ。じゃあ、ワタシは暇を飽かせてこの棺桶の中を紅く塗りたくろうかな」

「好きにしろ。どうせ空想上の血液だ」

「あらあら。袖にされちゃった。まあ、いいわ。ワタシはワタシに与えられた自由を楽しむだけだから」

(ワタシは棺桶に自ら蓋をする)

「左手首が涼しいな……全く不快なことを好む困ったヤツだ。それにしても何て心騒がしいんだろう?毎年この月はそうだ。どこか……胸苦しい。急に寒くなる頃だからだろうか?何だろう?この哀しさは?哀しい。哀しい。哀しい……」

(俺、頭を抱えて退場)

「何と薄暗い記事だろう?来るべき日までこの記事は封じておくに越したことはないだろう。それにしても、薄ら寒いことだ……満月が近いのか……やれやれ、難しい時期に難しい天文気象となるものだな」

(一旦、幕)