夜霧/散文

無知は闇に似ている。

闇の中では、

微かな光がとても強く感じられる。

小さな物音がとても大きく感じられる。

光に誘われ、

もっと強い灯りのある所へ、

もっと明るい所へと惹き寄せられる。

光があれば見えるという希望がある。

そして、いつか明るい所にたどり着く。

白痴は霧に似ている。

霧の中では、

目を開いていても霧が光を散乱して何も見えず、

耳を傾けても霧が音を吸収して何も聞こえない。

どこへ行けば良いのか解らない。

霧が体温を奪い、体は心から冷え切っていく。

夜も昼も、深い霧は人から知恵を奪い、心を奪う。

光があるのに見えない恐ろしさがある。