Gravity/散文
高みより地上を見下ろすと、
より強く引き寄せられるような感覚を味わうことができる。
「お前の居場所はそこではないよ。さあ、こちらへ戻っておいで」
大地がそう言っているように感じる。
頭が下がり、手すりを持つ手が緩む。
胸が手すりの上に載り、かかとが浮いて爪先立ちになる。
重力。
私たちはそれに抗って生きている。
立ち上がり、歩き、登り、飛び跳ねる。
しかし、いつも引き寄せられている。
落下の恐怖を想う。
それは速過ぎるし、早過ぎるのだ。
だから恐ろしい。
いつか人はそこに還る。
その時は、飛ぶのを止め、歩くのを止め、ゆっくりと膝を折って座り、そして寝転がり、体から力を抜いていく。
ゆっくりと大地に吸い込まれるように、
この星の重力とひとつになる。
以下、カット部分。
力を欲する者たちは、高い所に住みたがる。
石を重ね、塔を築き、階梯を登り、高みへと至る。
重力を克服しようとし、重力の根源たる大地から遠ざかろうとする。
しかしその実、大地から遠ざかるほどその力は潜在的に増していく。
そして、転落した時に猛威を振るう。
人は決してその大きな力からは逃れ得ないのだ。
大地はそこから生まれた者たちを必ずいつかその腕に取り返す。
そしてまた生み出し、送り出す。
空への憧憬は、大地への反発の裏返しであるように思う。
更に余談。
その強烈な意思が進歩をもたらすと言う点は見逃せないだろう。
天候神のほうが地母神を倒す話は多いよなぁ。