組織の再建/侏儒雑感「社会」

「夕張市、退職者相次ぐ 「役所自体が崩壊」の声も」(2007年07月09日12時03分)というニュースに触れてちょっと考えたんですが、そもそもまず人件費を減らすと言う姿勢に問題があるのではないでしょうか?

まずは、元記事を引用します。

夕張市、退職者相次ぐ 「役所自体が崩壊」の声も

2007年07月09日12時03分

 財政再建団体の北海道夕張市で「職員流出」が止まらない。退職者の続出で4月には半減したが、残った職員のうち、さらに42人が低賃金などを理由に今年度中の退職を検討していることが8日、市職員労組の調査で分かった。市幹部は「このまま職員が減り続ければ、市役所自体が崩壊する」として、市としても国や道と協議する意向で、財政再建計画の見直しに発展する可能性もある。

 市の財政再建計画は、普通会計から給与が支払われる職員を、06年4月の269人から「09年度当初までに134人」に減らすことを決めているが、今年3月の管理職を中心とした大量退職で139人に減り、2年分前倒しで水準をほぼ達成してしまった。4月以降も退職の動きは止まらず、さらに3人が辞め、加えて7月末までに5人が退職する予定だ。

 退職者が再び目立ち始めたことから、組合が7月4、5日にアンケートを実施したところ、管理職を含めた115人が回答。「今年度中に退職せざるを得ない」と答えた職員が42人に上り、「数年以内に退職せざるを得ない」との回答37人と合わせると、7割が数年以内の退職を考えていた。「定年まで勤める」との答えは6人だけだった。

 「退職せざるを得ない」とした人たちが挙げた理由(複数回答)は「将来に明るい展望を持てなくなった」が51人、「賃金の大幅削減で生活できない」が44人だった。

 再建団体になって以降の職員の年収は4割減、残業手当は再建計画で給与の2.5%以内と決められた。多くの職員の残業代は不払いになっている。7月末で退職する職員の1人は子ども3人で手取りが月約18万円。生活保護受給基準である最低生活費を下回った。

 組合は市側に「人権上も問題」と申し入れた。藤倉肇市長は「残業問題など職場環境の改善については国や道と協議したい」と話している。

経営において人件費は大きなウェイトを占めると聞きます。

しかし、僕は「組織には目的があり、目的を達成するために事業を実施する。事業を実施するためには労働者が必要である。計画を作るのも道具を作るのも、結局は労働者であり、すべては労働者の労働の結果である。ゆえに、事業費のほとんどは突き詰めると人件費に還元される」と思うわけです。人間の経済活動は、事務所などの土地代と道具を作る材料費を除けばみんな人件費です。

だから、経営において人件費が大きなウェイトを占めるのは当然と思います。それは道具を要しない知的産業ならばなおさらです(もう第三次産業を「サービス産業」と呼ぶのはふさわしくないと思います。同様に、「財とサービス」という言い方も。既にそういう提案はどこかでなされていると思いますが、一応)。

問題は人件費を削る方法論です。

夕張市のケースでは、財政再建のための支出抑制の意味合いを兼ねて職員全体の給与をかなりぎりぎりまでカットしたようです。しかし引用記事のように、カット幅が大きすぎて職員の士気を著しく損ねてしまい、「離職⇒残った職員の負担増⇒離職」という最悪のスパイラルに入りかけています。このままでは、複数の事業において散発的に人員の欠乏が発生し、同時多発的に事業の停滞が発生する恐れがあり、そうなってしまっては再建どころではなくなってしまいます。

こうならないために、全体的な給与カットは「叱咤」以上の意味合いを持たせず、財政再建は事業の選択的整理縮小によると考えるべきです。そして、事業を取捨選択していった結果、不要な部署の人員が削れて結果として人件費が削減される、という手順を踏むべき。この手順のポイントは、残された職場に「必要な部署だから残した」という態度を、削減された部署…といっても機能として都市に不要なわけではないので、民営化かあるいは一時凍結扱いとなるだろうから、民営化はおいといて凍結部署については「一時的な処置であり財政再建の過程でこれこれの順序で凍結は解除される」という説明をなすべき。まあ、中には「昔は流行ったけど今は通用しない事業スタイル」なんかもあるだろうが、それはすっぱり廃止される。

さて、これらの処置は内部のものには難しい、情が無いとか酷薄と言われるまでに徹底的に行われなければ効果は出ない。だから、大枚はたいてでも外部から有能な人を連れてくるべき。

日産がゴーンでそうしたように。

少なくとも、組織をだめにした連中以上に優秀な人間がいないと組織は立て直らない。再建と言うのはそれくらい大変なことだし、これから夕張のようなケースは増えるのだから国が財務官僚だか自治省官僚だかのトップエリートを送り込んでやるべき……と言いたい所だが、経営感覚がある官僚なんてそもそもレアなのか……。