船上/夢日記

■070405.thr-1■

水中だ。

どうしたんだ、僕は?

夢中で水面へ。目の前にヨットがあった。登る。背後で声がした気がして振り返った。後輩の女の子が怯えた表情で浮いていた。手を引っ張って甲板へと上がる。他の連中は?

周りを見ると海が燃えていた。豪華客船は傾き、沿岸警備隊の船が転覆している。僕らはあの客船の甲板にいて、何らかの衝突で振り落とされたことを思い出した。

僕らの何人かは陸側に落ちた。自力で上がれているといいが。

しかしとにかく今は自分のことだ。岸は遠い。何とかこのヨットを動かさなければならない。何とかセイルを整え、風を受ける。ステイが切れているので適当な位置に結びなおした。

ゆるゆるとヨットは進み、豪華客船と岸の間へと向かう。岸には野次馬が群がって、燃え盛る豪華客船に照らし出されていた。彼らはそれぞれに目を見はり、何かを指差している。その指差す先に、異様な光景が展がっていたのだ。ほどなく僕にもそれが見えてきた。

豪華客船の横腹に、ゴムのような質感をした朱色の巨大な何かが突き刺さり、だらりとぶら下がっていた。それは鋭角的で平べったく細長い、短剣のような形状をしていて、ゴムのような、と形容した肉は海洋生物特有の滑らかさと弾力を感じさせ、それが生き物であることを予感させた。僕はプラナリアを連想した。

コイツらに襲われたのだ。炎に照らされてぬらぬらと光るその皮膚を睨みつける。と、皮膚が動いたような気がした。

一瞬、炎の揺らめきかと思った。

しかし、それは違った。

その海洋生物の皮膚がぐねぐねと蠢き、いくつかのこぶが隆起し始めた。それらは次第に人のような形を取り始め、そして、その本体から飛び出した。飛び出したそれらは濃緑色の皮膚に瞳の無い眼を持ち、大きく口を開けた長い髪を振り乱した女性の姿であった。そして、それらは野次馬を襲い始めた。頭からかぶりついて、飲み込もうとする。それらは次々に本体から飛び出して、逃げ惑う人々を追い回し、いくらかを食べ、いくらかを取り逃がし、いくらかに反撃を食らってのた打ち回った。

それらの光景が炎に照らされてゆれていた。

■070405.thr-2■

今僕が見ている人間の名は伍助という。

彼は四国は宇和島藩の武士である。

今彼は父親と喧嘩している。

彼の家は上級武士と言えど家格はそれほど高いわけでなく、家禄もたいしたことは無い。

彼は次男坊で、長男が家を継ぐにあたり家を出ることになるわけだが、どうやら彼、海に出たいらしい。商船の主となって海を自由に廻りたいのだと。

これに父は当然反対し、それで喧嘩になっている。そういうわけです。

そして、ああ、伍助は家を飛び出して、海が見える崖っぷちに走っていきます。若いですねぇ。

さて、崖の端に座って暗い顔で遠く海を行く船を見ている伍助に背後から声をかける少女が現れます。

「船が好きなの?」

伍助は振り替えり一瞥すると等閑な返事を返します。

「ああ。だから?」

「船、乗りたい?」

「できればな」

「乗ればいいのに」

「それができれば悩みはせん」

ため息をつく伍助。そんな彼に少女は近づいて肩に手を掛け崖から突き落としました。

「は?」

落下する伍助と少女。

「うわ~~~~!何すんだお前~~~~!」

にっこりと少女は微笑みます。

水面が刻一刻と近づき、もう駄目だと思った瞬間、海中に叩きつけられました。

そして気がつくと船の上に伍助と少女は乗っていました。

船は見知らぬ水没した都市の中を進んでいます。

「ここは…?」

□ □ □ 

共通するのは「船」ですね。ま、解釈はどうでもいいです。