ブランコ/十行物語

何となく、思いつきで。

=*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*=

誰かが乗った名残だろうか、夜の公園にブランコが揺れていた。

誰も居ない公園に鎖の軋む音が響いている。

その音に引き寄せられて、私は鎖を掴んだ。

懐かしい金属の冷たい手触りに童心を思い出しながら、私は力いっぱい漕ぎ始めた。

力を入れるほどに加速して、風を切り裂く感覚と歪んでいく景色を楽しむ。

子供心にそれは自分を中心に世界が動いているかのような、愉快な気分にさせてくれたものだった。

しかし今の私は気付いてしまった。

どんなにブランコを速く漕いでも、その場から進む事は無いのだということに。

だから私は斜め45度で踏み切って、大きく弧を描いてブランコを飛び出した。

そして背後ではいつもと同じ場所でブランコが大きく揺れている。

=*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*==*=

…まだ僕は飛び出してないな…

漕いでいる。

しかも、座り漕ぎで。

飛び出さなきゃな。