ブランコ/十行物語
何となく、思いつきで。
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誰かが乗った名残だろうか、夜の公園にブランコが揺れていた。
誰も居ない公園に鎖の軋む音が響いている。
その音に引き寄せられて、私は鎖を掴んだ。
懐かしい金属の冷たい手触りに童心を思い出しながら、私は力いっぱい漕ぎ始めた。
力を入れるほどに加速して、風を切り裂く感覚と歪んでいく景色を楽しむ。
子供心にそれは自分を中心に世界が動いているかのような、愉快な気分にさせてくれたものだった。
しかし今の私は気付いてしまった。
どんなにブランコを速く漕いでも、その場から進む事は無いのだということに。
だから私は斜め45度で踏み切って、大きく弧を描いてブランコを飛び出した。
そして背後ではいつもと同じ場所でブランコが大きく揺れている。
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…まだ僕は飛び出してないな…
漕いでいる。
しかも、座り漕ぎで。
飛び出さなきゃな。