ある問答/myself
特に意味は無い。
ただ、こう想像しただけ。
「どうぞ」
「失礼します」
「お座り下さい」
「はい」
「ではまずお名前から」
「―――です。よろしくおねがいします」
「私は―――と申します。よろしくお願いします」
「初めに、当社を希望される理由をお聞かせいただけますか」
「率直に言って就職出来れば何処でも良いので、ただ受けた中の一社と言うそれ以上の意味はありません」
「それは…では、入社されたとしてどんな仕事をしたいとお考えですか」
「いえ、それは特に希望はありません。ただ、自分の能力の及ぶ限り最大限の努力をするのみです。その中で多少なりともこれまでに大学等で学んだ事が活かせれば良いと考えています」
「大学ではどのような事を学ばれましたか」
「研究ではまちづくりに関する制度面を中心に論文を書き、また、研究外では模型等を制作して景観デザインの勉強もしてきました」
「それが当社の業務でどういう風に活かせるとお考えですか」
「いえ、どれも基礎的なことばかりですので、実務における経験を積む事が必要と考えます。ただ、そういった分野に興味があることは事実ですので、いつかはそういう業務に携われると良いと思います」
「博士課程まで進まれていますが、今就職を希望される理由をお聞かせいただけますか」
「博士課程への進学は、就職できませんでしたのでとりあえず何処かに籍を置くという意味と、気質的に研究職が向いているかもしれないという考えを持っていたことの二つの理由がありましたが、一年も早く就職する事がやはり第一に両親からも望まれている事ですので、今年度の就職を求めて活動しております」
「こういう質問は失礼かもしれませんが、昨年度は上手くいかなかったのですか。その原因はご自分でどう分析されていますか」
「昨年度の初頭は、諸事情ありまして働く自信を失っており、就職活動できる精神状態にありませんでした」
「その自信を失ったおっしゃるのはどのような事情ですか。いえ、お答えいただける範囲で答えられて結構ですが」
「直接的な原因の一つは対人スキルの低さに起因するストレスです。親しくなるのに時間が掛かるタイプで、どうしても引っ込み思案な部分が現れます。それから、他人に頼る事が出来ずに一人で仕事や悩みを溜め込んでしまう面もあります。これらを自覚しながらもなかなか修正できない事が自信を失った理由です」
「それは克服できましたか」
「いいえ」
「では、今就職を希望されるのは一体」
「そういう完璧主義に拘っている場合ではなくなりましたので、その問題は棚上げして就職活動をしております」
「しかし、今はちゃんと受け答えできていると思いますが」
「当たり障りの無いフォーマルならある程度こなせるのですが、日常の距離感がよく解らないのです」
「そうですか…では、あなたの長所は何であると思われますか」
「中立性だと思います。常に自分自身を中立的で公平な立場に置き、全体のバランスをとろうと気にかけています。これは長所と言っていいと思います」
「何か、ご質問はありませんか」
「特に、ありません。実際にやってみないと解らない事がほとんどですし、解らなければその時に訊くしかありません。今の時点では、特にありません」
「当社は残業多いですが、大丈夫ですか」
「1、2時間程度なら問題ありません」
「それ以上では、どうですか」
「無理です」
「無理とはどうしてですか」
「効率が落ち過ぎて、意味のある残業になりません。翌日に回した方がよほど効率的です」
「しかし翌日朝が締め切りだとするとどうしますか」
「徹夜をして完成したためしがありませんし、徹夜があると思うと日頃の業務への集中度も殺がれますから、徹夜は仮定しません」
「…そうですか。質問がなければ終わります」
「ありがとうございました」
「お疲れ様でした」
「失礼いたします」
慇懃無礼で、考え過ぎなヤツだな。
少し斜に構えていてしかも理屈っぽくいから、扱いにくそう。
熱意も感じない。
それでこの年でしょう?
これは…どうですかね。
「あ~、しまったな~。思うままに答えちゃったな~。どうかな~。ってか、アレじゃ僕のキャラ伝わってないよな~。うわ~。でも、ま、仕方ないか」
「仕方なくあるか!?腹切って死ね」
「断る」
そんな感じ。
おやすみ