エラリイ・クイーン『Xの悲劇』(ハヤカワ文庫)
『Xの悲劇』読了です。
うむ…すごいトリックはすごいトリックです。
そして論理の明解さも良い。
ただ、筋は通っているんですが、それが壮大過ぎて一個人の発想するトリックとして現実離れして無いか?という釈然としない感じ。
それから、最後の謎解きの仰々しさが鼻についたというか…とにかく評価は☆4つです。
ドルリィ・レーンというキャラクタ造形は素晴らしい。よくこんなキャラクタを操れるな、という意味で脱帽。
以下、ここからはネタバレしながら感想書きます。
=*==*==*==*==*==*==*=<以下ネタバレ>=*==*==*==*==*==*==*=
確かに、謎解きにはウラをかかれましたが、それがイマイチ「やられた~!」って感じではないですね。
犯人が、どうしてあれだけ回りくどい犯行計画を発想したのか、全く理解できません。
犯行計画の蓋然性を問うべきではないと言うのであれば、文句無く星5つの傑作でしょう。
しかし、高々3人の男を完全犯罪で殺すのにあれだけの計画を思いつくというのは、精神に異常をきたしているとしか思えない…ってきたしていたんですっけね。
非常に微妙な判断です。
僕も最初の事件では車掌という職業に注目していました。手袋をしていてもおかしく無い職業といったら第一に挙げられますからね。しかし、それが二番目の犠牲者となったのですからすっかりわからなくたってしまったのです。
なぜ彼を容疑者から外したのか?
それは一つ目には、もし二番目の犠牲者は首尾良く「顔の無い死体」にならなければならないが、その方法がフェリーという自分以外のものに頼るという不確実な手段だったということ(ただし、「顔の無い死体」を作る理由を隠せるという意味では意図が一貫する)。二つ目には、遺体の認知の理由が「足の怪我のあざ」という非常に特殊な特徴であり、偽装のための努力が非常に困難であるということ。三つ目には、偽装のために費やした時間が3年以上というのは忍耐強過ぎる。
以上の三つが複合的に働いて、ウッドを容疑者から外させてしまった。
以降はウッドは協力者であり、真犯人に消されたという路線に凝り固まってしまって、真相にはかすりもしませんでしたね。
だって、昼と夜で二役やるなんて、働きすぎですよぉ!(見当違いな不平)
それから、あんなにもったいぶった逮捕劇が必要だったでしょうか?
そんなこんなで星5つをどうしてもつけられませんでした。
喩えるなら鈍器なんですよね。
刀のように鋭く「斬られたっ」てわけじゃなく、銃のように圧倒的な感じも無い。
ごつっとやられて、「ぐ、むぅ」っていう華々しさの無いやられ方が、負けっぷりとしてあまり気持ちよくないというか…。
惜しいかな。苦しいかな。