藤崎竜『WOLDS』短編集(集英社 JUMP COMICS)

影の国(シャドウランド)へようこそ!

/『SHADOW DISEASE』より、結びのコマから/

フジリューの初単行本。

友人から100円で買った。

初単行本というのに、藤崎氏は「短編の雄」と呼ばれるだけあって佳作揃いでございます。

初めて描いた漫画が『ハメルンの笛吹き』というのは非凡。

ぜんぜん『笛吹き男』の話にのっとってない、ただ「神のプログラム」というワードのためにある作品。それが良。

そして続くのが『WORLDS』で異色。二つの世界の虚実に意識は混濁し、人はまた夢に逃げ込む。ダークなラストがスパイシィ。

『TIGHT ROPE』で初めて連載に耐え得る作品が登場。怠惰と自由という相反する希望。そして管理する、管理されるということ。

『SHADOW DISEASE』では画面を意識したそうだ。影と光の対比。黒と白のバランス。反転する善悪。作者曰く、「完璧に『仕上がった』と思って書き終えた原稿は『SHADOW DISEASE』のみ」。

そして『Soul of Knight』。「漫画らしさ」にチャレンジしたという作品。悪く言えば一番平凡。でも、それまでは非凡すぎて連載向きとは言えなかったから、このチャレンジは連載獲得のための通過儀礼だったと考えることもできる。ただしアタウアルパに関しては満点(笑)。

そんな藤崎氏の原点が垣間見られる短編集です。