和月伸宏『るろうに剣心』全28巻(集英社 JUMP COMICS)

「剣は凶器、剣術は殺人術。どんな綺麗事やお題目を口にしてもそれが真実。」

/第一巻、第一幕より、緋村剣心のセリフ/

引用したセリフがこの漫画を集め始める決め手です。

この冷たい真実に、それでも微笑みながら甘っちょろい戯言が好きと言ったあの時、この主人公の光と影が気になりました。

絵が少女マンガ的とか色々言われていましたが、当時少女マンガをあまり知らなかった僕には全く気になりませんでした(今見ると少女マンガっぽいというのはよくわかります A^_^;)。

「罪はいかにして償われるべきか?」

この疑問に取り組んだ作品だったと思います。

この点に注目してこの漫画を集めたので、僕にとってるろ剣で一番好きだったシリーズは「人誅編」です。

作者もこのシリーズで少年漫画を書く楽しさを知ったと書いていたように、「京都編」のまさに少年漫画的な展開も確かに面白かったです。

しかし、僕は連載開始から刃衛のエピソードを経てずっと剣心の「罪の意識」との闘いに興味があったので、それにようやく答えが出た「人誅編」のほうが非常に興奮して読めました。

答えは既に出ていた、というのはカッコよかったです。

さて、ところで縁が薫を殺さなかったという展開について、賛否両論あるみたいですね。

殺さないというのはおかしいという人、あの展開でよかったという人・・・。

しかし最終話の最後の3ページ、薫と剣心のシーンはやはり薫が生きているからこそのラストだと思います。

それにもし、薫が殺されたとすると、その後の展開はちょっとさびしいものだったでしょう。

「最後まで悩んだ」、という作者は薫を殺した場合はどういうラストを考えていたんでしょうか?

僕の推測では、剣心は再び流れ、神谷道場は取り壊し、左ノ助は逃亡。そして数年後―、跡地で昔を振り返る弥彦青年―ってところでしょうか。ベタですいません。

この展開の良くないところはやや後ろ向きな部分を含む、という点です。

別にそういうラストが悪い訳ではありません。しかし、少年誌に相応しくないといえるでしょう。

「救われないラスト」と楽しむのは世の中の苦さを知ってしまった大人の楽しみ方であるべきで、少年少女には未来にあふれたハッピーエンドを志向してもらいたいと思います。

(・・・とか言ってられないほどくらーい作品が最近のジャンプには増えてますけど。)

良作だったと思います。